ァ場に置かれたことが一切の誤謬の原因である。持續を體驗する主體は、他者への生に沒頭する本來の態度を置き棄て、自己の姿を自覺の鏡に寫さうとする反省の位置に退いてゐる。認識の方法は直觀といはれてはゐるが、これは抽象的思惟を却けるだけのもので、根源的體驗に比べてはすでに反省の立場に移つてゐる。
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(一) この點に關しては拙著「宗教哲學」及び「宗教哲學序論」の諸處、並びに本書第七章一參看。
(二) Confessiones. XI, 14 seqq.
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四
以上述べ來つた時及び時間性の本質的構造よりして吾々は、永遠性との對立及び聯關において觀られる場合特に重要性を發揮する諸の特徴、時間性の形式的特徴ともいふべきもの、を導き出しつつ理解し得るであらう。第一は時の方向である。時の方向は將來より現在を經て過去へ向ふとも、又反對に過去より將來へ向ふとも考へられる。この矛盾は時の觀念の中に伏在する問題を示唆するとしての意義はあらうが(一)、その問題は、後の論述の明かにするであらう如く、時間性の異なつた段階を區別することによつてのみ解決を
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