特徴として特に強調すべきである。このことと聯關して、かれにおいては觀想が優位を占めるといふことはなく、又それの對象が自然的生との聯關を離れて獨立性を保つといふこともない。更に又このことと從つて人倫的活動の強調と聯關して、彼においてはエロースは飽くまでも人倫的共同從つて實在者の間の共同に踏留まつてゐる。プラトンは指導者と被指導者年長者と年少者との間に存するかくの如き生の共同をそれの人倫的從つて實在的基礎より切離し、媒介者の役を務めたに過ぎなかつた觀想とそれの對象とに終極性を與へることによつて、哲學的エロースの思想を創造した。エロースとしての愛の立場においてはこれこそ本來の傾向の徹底といふべきである。
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(一) esti gar ho philos allos autos. ―― Aristoteles: Eth. Nic. 1166 a.
(二) 活動に關しては八節以下參看。
(三) SymP. 203.
(四) 次の二書參看。Holl: Gesammelte Schriften. III. S. 81 ff. ―― A. Nygren: Eros und Agape. II, S. 321 ff. ――中世的世界觀の詩的代表者として、ダンテの「天國」篇も勿論一例として擧げることが出來よう。例へば人口に膾炙する次の句參看。
 〔Licht der Erkenntnis ganz erfu:llt von Lieben〕,
 〔Lieben des wahren Guts, voll Fro:hlichkeit〕,
 〔Voll Fro:hlichkeit, die Worte nie beschrieben〕.
    (Par. XXX, 40. Nach Gildemeister.)
(五) Metaphysica. 1078 b, 17 ff.
(六) Zeller がこれを採用して以來これは最も廣く行はれた解釋である。それの誤謬を示し正さうとしたことは H. Maier (”Sokrates.“1913) の功績といふべきであらう。
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        三四

 以上論じ來つたエロースより區別されるものとして、「アガペー」(〔agape_〕)の名を以つて呼ばれる愛がある(一)。これは歴史的にはキリスト教の世界におい
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