力一パイに仔犬を抱いていましたが、大きな男にかかっては、かないません。とうとう取り上げられてしまいました。
「さあ箱の中へはいっておれ!」
 可哀そうに、仔犬は首をつかまれて箱の中へ投込まれました。
 ミコちゃんは可哀そうで可哀そうでなりません。なんとかして助けてやろうと決心しました。
「ね、おじさん。あたいがその犬飼うわ。だから下さいな。ね、おじさん、いいでしょう。」
 ミコちゃんは一生懸命にたのみました。けれどだめです。
 箱の中へ入れられた仔犬は、急に悲しくなったのか、キャンキャンキャンと泣いて、のどが破れて血が出るかと思われる程です。早くお家へ帰って、お母様のおなかの下で温まりたくなったのでしょう、箱の中から、板を引っ掻いては泣くのでした。けれど仔犬の力ではどうすることも出来ません。
 それを見ていると、ミコちゃんも、なんだか悲しくなって来ました。
 その時、黒いマントを着たやさしいおまわりさんが来て、ミコちゃんの頭をなでながら、
「感心な児じゃ。よしよし。おじさんが助けて上げよう。」
 と言って、箱の中から、さっきの仔犬を出してくれました。さあ、ミコちゃんは大よろこびです。

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