ちがほしくなったのでしょう、仔犬の泣き声が、キャンキャンと悲しそうに聞えて来ます。
 その時、まだ生れて間もないようなちいちゃな仔犬が、ちょこちょこと駈けて来ました。
 きっと箱の中の、お友達の泣き声を聞いて、どうしたのか、と思って出て来たのでしょう。仔犬は大きな箱を眺めて、不思議そうに考え込みました。
 恐しい二人の犬殺は、やがてこの仔犬を見つけてしまいました。
「おや、こんな小さいのが出て来たぞ。」
「これはすてきだ。どれ、捕えてやろうか。」
 二人の犬殺は、両方から、仔犬をかこんで、はさみうちにしようとしています。
「まあ、可哀そうだわ。」
 ミコちゃんは思わず声を出してしまいました。すると、その声を聞いたのか、仔犬は急に走って来て、ミコちゃんの足にじゃれつきました。急いでミコちゃんは仔犬を抱き上げました。
 それを見た二人の犬殺は
「こら! 早く犬を出さんと、お前も、箱の中へぶち込むぞ!」
 と叫んで、ミコちゃんをにらみつけました。
「いや、いやだわ。」
「どうしても出さんと言うんだな!」
 大声で犬殺はそう言うと、無理にミコちゃんの手から仔犬をもぎ取ろうとします。ミコちゃんは
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