なるだらうと拒《こば》んだものもあつたが、ナニ職人《しよくにん》だツて話が上手《じやうず》なら仔細《しさい》ないと云《い》ふ事で、可楽《からく》を入《い》れてやらせて見た所が、大層《たいそう》評判《ひやうばん》が宜《よろ》しく、可楽《からく》が出るやうになつてから、一ト際《きは》|聴手《きゝて》が殖《ふ》えたと云《い》ふ位《くらゐ》。
 そこで可楽《からく》が不図《ふと》考《かんが》へ附《つ》いた可「是《これ》は面白《おもしろ》い、近頃《ちかごろ》落語《らくご》が大分《だいぶ》流行《はや》るから、何所《どこ》かで座料《ざれう》を取《とつ》て内職《ないしよく》にやつたら面白《おもしろ》からう、事に依《よつ》たら片商売《かたしやうばい》になるかもしれない。と昼間《ひるま》は櫛《くし》を拵《こしら》へ、夜だけ落語家《はなしか》でやつて見ようと、是《これ》から広徳寺前《くわうとくじまへ》の○○茶屋《ぢやや》と云《い》ふのがござりまして、其家《そのいへ》の入口《いりぐち》へ行燈《あんどん》を懸《か》けたのです。唯《たゞ》「はなし」と書放《かきはな》しにして名前などを書いたものではない、細い小さな
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