明治の地獄
三遊亭円朝
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)一席《いつせき》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一人|行《ゆ》く
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から1字上げ](拠酒井昇造速記)
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ぢごく/\らく
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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えゝ一席《いつせき》申上《まうしあ》げます、明治《めいぢ》の地獄《ぢごく》も新作と申《まう》す程《ほど》の事でもなく、円朝《ゑんてう》が先達《せんだつ》て箱根《はこね》に逗留中《とうりうちう》、宗蓮寺《そうれんじ》で地獄極楽《ぢごく/\らく》の絵《ゑ》を見まして、それから案《あん》じ附《つ》きましたお短《みじ》かい落語《おとしばなし》でございますが、まだ口慣《くちな》れませんからお聞苦《ききぐる》しうございませう。人間が死んで地獄《ぢごく》へ行《ゆ》くとか、善《ぜん》を為《な》したる者《もの》は極楽《ごくらく》へ昇天《しようてん》するとか、宗教《しうけう》の方《はう》では天国《てんごく》へ行《ゆ》く、悪国《あくこく》へ堕《おち》ると云《い》ふ、何方《どちら》が本当だか円朝《ゑんてう》には分《わか》りませんが、地獄《ぢごく》からどうせ郵便の届《とゞ》いた試《ため》しもなし、極楽《ごくらく》の写真《しやしん》を見た事もないから、是《これ》は有《あ》るか無《な》いか頓《とん》と分《わか》らん事で、人が死んで行《ゆ》く時は何《ど》んなものか、此《こ》の肉体《にくたい》と霊魂《たましひ》と離《はな》れる時は其《そ》の霊魂《たましひ》は何処《どこ》へ去《ゆ》きますか、どうも是《これ》は分《わか》らん。此等《これら》の事を考へなければ本当の智識《ちしき》とは言へんと云《い》ふ事ださうでございます。随分《ずゐぶん》彼《あ》の悟道《さとり》の方《はう》には、「ガンコウ地に堕《おち》んと欲《ほつ》する時そもさんか何《いづ》れの処《ところ》に達《たつ》せん。と死んでプウと息の止まつた時に此心《このこゝろ》は何処《どこ》へ行《ゆ》くかと云《い》ふ……何処《どこ》へ参《まゐ》りませう、是《これ》は皆様方《みなさまがた》を伺《うかが》つたら何処《どこ》と仰《おつ》しやるか知《し》りませ
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