い」
女「有難うございます、どんなに悦ぶか知れません、東京の知った方がお出でになると帰りたいと涙ぐんで話すので、中には連れて行《ゆ》こうと云う人もありますが、私があるから行《い》く訳にも往《ゆ》きません、私も行《ゆ》きたいと云うと、婆《ばゞア》が一緒じゃア困ると仰しゃる、それゆえまア此処に居ります……お前さんは相変らずお元気で」
幸「何うも仕方がありません、親父が死んでからは何も為《し》ません、只遊び一方で仕様がない、怠惰者《なまけもの》になって仕様がありません」
由「御苦労なすった御様子ですが、まだ御新造さんなどは宜しいので、先刻木暮へ漬物を売りに来た方は五百石取ったとか云う、ソレ彼《あ》の色の白い伊香保の木瓜《きうり》見たいな人で、彼の人が元はお旗下だてえから、人間の行末《ゆくすえ》は分りません……じゃア御新造さん私も種々お話もありますから翌《あす》の晩」
女「屹度《きっと》見世を仕舞うと参ります、もう仕舞いましょうと思います」
由「翌の晩ですよ、左様なら」
 と其処《そこ》を出て暗くなって帰って来ましたが、木暮八郎の三階の八畳と六畳の座敷を借りて居る二人連れ、婦人の若い方《かた》
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