くらいで、ほんの景気に並んで居るのでございます。お婆さんが茶を売って居る処へ三人連で浴衣に兵子帯《へこおび》の形姿《なり》で這入ろうとすると、何を思ったか掛茶屋の方を見て、車夫の峯松が石坂をトン/\駈下りました。
幸「おい……峯公何うしたのだ、駈下りたじゃアねえか」
由「其処《そこ》まで来て駈下りましたが、何か忘れ物でもしたのでしょう、貴方がカバンを提げて居らっしゃるとキョト/\して居ます、初めて伊香保へ来たから華族さんや官員さんの奥様や、お嬢さん達の衣装が綺麗で、日に二三度も着替えて御運動だから、彼奴《あいつ》は安物買が勧業場《かんこうば》へ来たようにキョト/\して、危い石坂を駈下りたりなにかするので、今は何で行ったか分りませんが、時々能く物を買って食う男で、随分意地の穢《きたな》い男で」
幸「何しろ何処《どこ》かへ休もうじゃアねえか」
と傍《かたわら》の茶見世へ這入ると、其処に四十八九になる婦人が居ります。髪は小さい丸髷に結い、姿《なり》も堅い拵《こしら》えで柔和《おとな》しい内儀《かみ》さんでございます、尾張焼の湯呑の怪しいのへ桜を入れて汲んで出す。其のお盆は伊香保で出来ます括
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