帰って見ますると、留守中に斯様な次第と云う。段々調べると、成程店受の処に居りました時間もありますし、江川村から出た時間もありますから全く間違えて女房を殺し、転倒《てんどう》して縊《くび》れて死んだ事であると分ったので事果てましたから、死骸はまず佐十郎方へ引取らせて、野辺送りをいたしました。初めは少しむずかしかったが、松五郎お瀧も別に処分もありませんで、それなりに事済みになりましたが、松五郎お瀧は此の辺の村の者に憎まれて居《い》られませんから、早々|世帯《しょたい》を仕舞って、信州へと云うので旅立ちました。

        十九

 お話二つに分れまして、これは明治七年六月の末のお話でござります。夏になると湯治場が流行《はや》りますが、明治七年あたりは湯治場がまだそろ/\是から流行って来ようと云う端緒《こぐち》でございました。熱海《あたみ》、修善寺《しゅぜんじ》、箱根《はこね》などは古い温泉場でございますが、近年は流行《りゅうこう》いたして、また塩原《しおばら》の温泉が出来、或《あるい》は湯河原《ゆがわら》でございますの、又は上州に名高い草津《くさつ》の温泉などがございます。先達《せん
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