又|勤惰《きんだ》によって定め置くものでござります。勉強次第で主人の方でも給金を増すと云う、兎に角|宅《うち》へ置いて其の者の腕前を見定めてから給料の約束を致します。又一つの年季と申しますると、一年も三年も或《あるい》は七年も八年もございますが、何十円と定めまして、其の内|前金《ぜんきん》を遣《や》ります。皆手金の前借が有ります。それで夏冬の仕着《しきせ》を雇主《やといぬし》より与える物でございます。これは機織女を雇入れます時に、主人方へ雇人請状《やといにんうけじょう》を出しますので、若い方が機に光沢《つや》が有ってよいと云うので、十四五か十七八あたりの処が中々上手に織りますもので、六百三十五|匁《もんめ》、ちっと木綿にきぬ糸が這入りまして七十寸位だと申します。其の中《うち》で二崩しなどと云う細かい縞《しま》は、余程手間が掛ります。一機《ひとはた》四反半掛に致しましても、これを織り上げて一円の賃を取りまするのは、中々容易な事ではございません。機織場の後《うしろ》に明りとりの窓が開いて居ります。足利|辺《あたり》では大概これを東に開けますから、何故かと聞きましたら、夏は東から這入りまする
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