此処の湯は癪に宜しいから、癪を癒しながら働きに来て居るので、働きと云うような身分じゃアないが、只病気には敵《かな》わぬから余儀なく働き、運動かた/″\斯うして居ると云うのではありませんか」
幸「そんな奴があるものか、鯉こくを持って来るぐらいに運動てえ事があるものか」
由「けれども……オヤ是れはお出でなさい」
女「誠に遅くなりました」

        四十

由「おや先刻《さっき》から待って居ました、遅くっても結構、鯉こく結構、これは不思議で」
女「これは誠においしくは御座いませんが、召上るように」
由「此方《こちら》の家《うち》からかえ」
女「いゝえ鈴木屋からで」
由「そうで、鉄火煮は恐れ入った……貴方の様な別嬪にお酌をして貰うのを楽しみにして来たので、貴方の居るのを知って来たので、貴方が居ないと伊香保から此処まで来はしません……貴方|苦笑《にがわらい》してはいけません、何うもお品が好うがすな、何か云うとこう苦笑いなどは恐れ入りますねえ」
幸「姉《ねえ》さん、此の人はお饒舌《しゃべり》で失敬な事を言うから腹ア立っちゃアいけません」
女「どう致しまして」
由「いや何うも此の鯉こくなどは
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