お若いに能く人の世話をなさると聞いて居りますが、誠に感心な事です」
三「いえ何う致しまして、併《しか》し貴方は何時も御壮健で」
佐「いえ最ういけません、年を老《と》ったので何も手伝いが出来ん事に成りました」
三「恐入ります、尊君さまの御令貌《ごれいぼう》の処は中々御壮健な事で……えゝおくのさん、誠に御無沙汰を致しました、此の間はまた何よりの物を戴き誠に有難う……つい離れて居りますから存じながら御無沙汰に相成ります……えゝ今日《こんにち》は少々御内談を願う義が有って態々《わざ/\》推参致したる理合と云うは内々《ない/\》の事で、何うも御尊父さまの御腹立《ごふくりゅう》の処は予《かね》て承知致し罷り有るが、実は茂之助殿の儀に就いて奈何《いかに》とも詮術《せんすべ》有る可からざる処の次第柄に至りまして、何とも申し様も有りません」
佐「えゝ彼《あれ》は魔がさして居りますから頓と宅《うち》へは寄せ附けません、子は無い昔と諦めて居りますなれども、嫁に至っては如何にも孝心な者でござって、少しも悪い顔を致さず、誠に私《わし》を真実の親のように大切《だいじ》にしてくれますから、彼《あ》んな白痴者《たわけもの》は要りません、最うおくの一人で沢山でござる、孫も追々成人しますから、田地其の他所持の財産は皆孫|等《ら》に譲り与えて奧木の相続を致させますから、貴方決して彼には構わんで下さい、金円の儀は聊《いさゝ》かたりとも御用立下さらんが宜しい、お心得のため申上げ置きます」
三「へえ……さて何うも此処に於て謝せずんば有るべからざる事件が発して、如何《いかに》とも恐入り奉ります儀で」
佐「ムー何んで、何事でござるか」
三「誠に何うも申し悪《にく》いが、何時までぐず/″\匿《かく》しても居《お》られませんから一伍一什《いちぶしじゅう》申上げる儀でござるが、実は彼《あ》の婦人の手を切るに三十円と云う訳で、段々|先方《せんぽう》へ掛合った処が、間男を為《し》た覚えはないから出る処へ出ると云うのだが、出る処へ出れば第一尊君のお名前に障り、当人の耻にも成る訳で悪い、女の方から先方《むこう》へついて三十円|遣《よこ》せと云う次第で、誠に恐入りますが三十円此の川村三八郎へ下さると思召《おぼしめし》て、御腹立《ごふくりゅう》では御座いましょうけれども願いたい」
と云われて見れば捨てゝ置けず。然《そ》うもして遣
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