ほう》で、服装《なり》は木綿縮《もめんちゞみ》の浅黄地に能模様丸紋手《のうもようまるもんて》の単物《ひとえもの》に唐繻子《とうじゅす》の帯を〆《し》め、丸髷には浅黄鹿《あさぎが》の子《こ》の手柄を掛けて居ます、朱縮緬の帯止をこて/\巻付けて、仕入物の蒔絵《まきえ》の櫛に鍍金足《めっきあし》に土佐玉の簪《かんざし》で、何処ともなく厭味の女が、慣れ/\しく、
女「貴方|此方《こちら》へ入らっしゃいまし、御緩《ごゆる》りお坐りなさい」
由「へえ有難うございます、誠にお邪魔さまで」
女「お婆さん其の包みを脊負《しょ》っておいでよ…貴方方は東京《とうけい》でいらっしゃいますか」
由「えゝ東京で」
女「東京のお方と聞くとお懐かしゅうございますこと」
由「貴方も東京でございますか」
女「はい私《わたくし》は足利の方の親類共に厄介に成って居りまして、時々博覧会や何か有りますと東京へ参りますが、上野はまた別でございますね」
由「へえ左様です」
女「今度の博覧会は立派な事でございますね」
由「えゝ盛大な事でございます」
女「大して人が出ますね」
由「えゝ出品|物《もの》も余程多い事でございます」

        五十九

女「私もそれから彼方此方《あっちこっち》と見物も致しましたが、私は此の様に肥《ふと》ってますもんですから、股が縮《すく》むようで何だかがっかり致しますので、それから何でございますね、弁天から上野の辺が誠に綺麗に成りましたこと、それに松源《まつげん》鳥八十《とりやそ》などと云う料理茶屋も立派に普請が出来ましたね」
由「えゝ大層……立派に普請が出来ました」
女「それに花火の仕掛ものなどは昔とは全然《すっかり》違ってしまいました」
由「えゝ大した勉強な事で」
女「是までの東京《とうけい》の玉屋鍵屋などで拵える仕掛とは違いまして、ポッポと赤い火や青い火が燃えまして誠に不思議で、あの水の中をチュ/\/\と走って歩くのは彼《あれ》ア何てえのでございましょう」
由「へえ何てえますか私は知りません」
女「貴方は新富町《しんとみちょう》へいらっしゃいましたか」
由「えゝ参りました」
女「大層|巧《よ》く演《いた》しますね、今度の狂言は中々大入で、私が参りましたら一杯で、尤も土曜日でございましたが、ぎっしりでございましたよ」
由「へえ、土曜日曜は大入で」
女「團十郎《なりたや》は何うも
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