だよ」
内儀「有るたって此処にもございますもの、御覧遊ばせ此の通り……」
七「おや/\こゝにも一枚……一枚の黄金が二枚になったか知ら、これは驚いた、黄金が子を生みやアしめえ。(ポンと手を拍《う》ち)あ分った、二枚拝領したんだ、しかし一枚やろうと仰しゃって二枚出したのを嬉しまぎれに奪取《ひったく》って二枚一緒に持って来たに違いない、これは済まん、直《すぐ》に往って返して来る」
と云いすてゝせっせと石川様へ来て見ると、お客様がお帰りになった後《あと》で。
殿「何だえ七兵衞、雪だらけになって何うしたんだ」
七兵衞はせえ/\息を切り、
七「ハアー水ッ一杯……」
殿「これ誰か七兵衞に何《なん》かやんな、せえ/\と云っているから……今日は変だな、だまって駈出してしまって、まだ種々《いろ/\》話もあったに、何うしたえ」
七「殿様、誠にお恥かしい事でございますが、手前は何処からお招きがございましても面倒だから何処へもまいりません、あなた方の我儘を聞くのが厭だから滅多に出ません、ところが今日《こんにち》家内が米がない、米櫃を払ってお粥を炊いた、これではいかんから石川様へいらっしゃれば、屹度お歳暮を下
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