い》は屋根の瓦がばら/\/\と落ちたという、それが為|瓦胴《がどう》という銘が下りたという事を申しますが、この七兵衞という人は至って無慾な人でございます。只|宅《うち》にばかり居まして伎《わざ》の事のみを考えて居りますから貯えとてもありません。お大名から呼びに来ても往《ゆ》きません。贔屓のお屋敷から迎いを受けても参りません。其の癖随分贅沢を致しますから段々|貧《ひん》に迫りますので、御新造《ごしんぞ》が心配をいたします。なれども当人は平気で、口の内で謡《うたい》をうたい、或はふいと床から起上って足踏をいたして、ぐるりと廻って、戸棚の前へぴたりと坐ったり何か変なことをいたし、まるで狂人《きちがい》じみて居ります。ちょうど歳暮《くれ》のことで、
内儀「旦那え/\」
七「えゝ」
内儀「貴方には困りますね」
七「何ぞというとお前は困るとお云いだが何が困ります」
内儀「何が困るたって、あなた此様《こんな》に貧乏になりきりまして、実に世間体も恥かしい事で、斯様な裏長屋へ入って、あなたは平気でいらっしゃるけれども、明日《あす》食べますお米を買って炊くことが出来ませんよ」
七「出来ないって、何うも仕方
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