や》の許《もと》へやつて参《まゐ》り、玄関《げんくわん》へ掛《かゝ》つて、甚「お頼《たの》ウ申《まうし》ます。書生「どーれ、ヤ、是《これ》はお入来《いで》なさい。甚「エヽ先生は御退屈《ごたいくつ》ですか。書「別に退屈《たいくつ》も致《いた》しちやア居《ゐ》ませぬが、何《なん》ですい。甚「いえ、お宅《たく》にお出《いで》なせえますかツてんで…エヘ…御在宅《ございたく》かてえのと間違《まちがひ》たんで。書生「さうか、ま此方《こつち》へお上《あが》り。甚「アヽお目《め》に懸《かゝ》つて少々《せう/\》お談《だん》じ申《まうし》てえ事があつて出ましたんで。書生「お談《だん》じ申《まうし》たい……エヽ先生|八百屋《やほや》の甚兵衛《じんべゑ》さんがお入来《いで》で。真「おや/\夫《それ》は能《よ》くお入来《いで》だ、さア/\此方《これ》へ、何《ど》うも御近所《ごきんじよ》に居《ゐ》ながら、御無沙汰《ごぶさた》をしました、貴方《あなた》は毎日《まいにち》能《よ》くお稼《かせ》ぎなさるね朝も早く起《おき》て、だから近所でもお評判《へうばん》が宜《よ》うごすよ。甚「えゝ、何《なに》かソノ承《うけたま》はりまして驚入《おどろきい》りましたがね。真「エ、何《なに》を驚《おどろ》いた。甚「何《なん》だか貴方《あなた》はソノお邸《やしき》から持《もつ》てお出《いで》なすつたてえことで。真「エ。甚「盗《ぬす》んで来《き》たつてね。真「何《ど》うも怪《け》しからぬことを仰《おつ》しやるねお前《まへ》さんは、私《わたし》も随分《ずゐぶん》諸家様《しよけさま》へお出入《でいり》をするが、塵《ちり》ツ葉《ぱ》一|本《ぽん》でも無断《むだん》に持つて来た事はありませぬよ。甚「いゝえ夫《それ》でも確《たしか》に持つて来なすつた。真「何《ど》うも怪《け》しからぬ事を、何《なん》ぼお前《まへ》さんは人が良《い》いからつて、よもや証拠《しようこ》のない事を云《い》ひなさるまい。甚「エヽありますとも、アノ一|番《ばん》奥《おく》の掃溜《はきだめ》の前《まへ》の家《いへ》のお関《せき》さん、彼《あ》の方《かた》が証拠人《しようこにん》です。真「証拠人《しようこにん》ならお連《つれ》なさい、此方《こつち》は些《ちつ》とも覚《おぼえ》のない事だから。甚「エヘヽヽヽ、ナニおせきさんぢやない赤いソノ何《なん》とか云《い》
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