まア詰らん物じゃアが一杯遣りなさい」
七「有難う……此のお座敷は今まで存じませんだったが、こんな小座敷はないと思って居りました、へえ此の頃お手入で、なるほど斯《こ》う云う処がなければ不自由でしょうね、大層お庭の様子が違いましたな」
永「あゝ彼処《あそこ》に墓場が有るから参詣人が有るで、墓参りのお方に見えぬように垣根して囲《かこ》ったので」
七「なるほど左様で、墓場から覗《のぞ》かれては困りましょうね、旦那は薬喰いと云うが、此の頃は大層|腥物《なまぐさもの》を喰《あが》りますが、腥物を食ったって坊様が縛られる訳でもないからねえ、当然《あたりまえ》で、旨い物は喰った方が宜《よ》うがすね」
永「はい実はな時々養いに喰《や》るじゃ、魚喰うたとて何も咎《とが》めはないが、仏の云うた事じゃアから喰わぬ事に斯う絶って居《お》るが、喰うたからって何も其の道に違《たご》うてえ訳ではないのよ」
七「然《そ》うでしょうね、これは然うでしょう、些《ちっ》とは精分を付けなければなりませんね、旦那今日は御馳走に成ります積りで」
永「左様ともね」
七「実は旦那お願いが有りますが、お前さんにも拝借致しましたし、その上
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