》み、仕方が無いから分散して、夫婦の中に十歳になりますお繼という娘を連れて、行《ゆ》く処《ところ》もなく、越中《えっちゅう》の国|射水郡高岡《いみずごおりたかおか》と云う処に、萬助《まんすけ》という以前の奉公人が達者で居ると云うから、これを頼って行《ゆ》き、大工町《だいくちょう》という片側町《かたかわまち》で、片側はお寺ばかりある処へ荒物店《あらものみせ》を出し、詰らぬ物を売って商い致す中《うち》に、お梅もだん/\慣れまして、外《ほか》に致方《いたしかた》も無いから人仕事《ひとしごと》を致しますし、碌には出来ませんが、前町《まえまち》は寺が多いからお寺の仕事をします。和尚さんの着物を縫ったり、納所部屋《なっしょべや》の洗濯をしたり、よう/\と細い煙りを立てまして居ります中《うち》、お話は早いもので、もう此の高岡へ来ましてから三年になりますが、大工町に宗慈寺《そうじじ》という真言宗の和尚さんは、永禪《えいぜん》と申して年三十七でございます。此の人は誠に調子の宜《い》い和尚さんで、檀家の者の扱いが宜しいから信じまして、畳を替える本堂の障子を張替《はりかえ》る、諸処を修繕するなど皆檀家の者が
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