同様音も沙汰もしずに居ましたが、旅魚屋の仲間の者が帰って来て聞きましたら、三年|前《あと》に信州の葉広山とか村とかいう処で悪い事をして斬殺《きりころ》されたと聞きましたが、それとは知らず一旦亭主にしましたから、私《わたし》は馬鹿が夫を待つという譬《たとえ》の通り、もう帰るかと待って居りましたが、三年経っても音沙汰がない所へ、それを聞いてから、日は分りませんが私《わたくし》もまア出た日を命日としまして、猿江《さるえ》のお寺へ今日お墓参りをして、其処に埋めた訳でも有りませんけれども、まア志のお経を上げて帰って来る道で、あなたにお目に懸るとは本当にまア思掛けない事でねえ」
照「本当にねえ、だがお前は矢張《やっぱり》あの上野町に居るのかえ」

        六十一

きん「はい上野町に居りましたが、彼《あ》の近辺《きんじょ》は家《うち》がごちゃ/\して居ていけませんし、ちょうど白山に懇意なものが居りまして、あちらの方はあの団子坂の方から染井《そめい》や王子《おうじ》へ行く人で人通りも有りますし……それに店賃《たなちん》も安いと申すことでございますから、只今では白山へ引越《ひっこ》しまして、や
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