はるなぎ》で暖《あった》かいのに、すっぱり頭巾で面《おもて》を隠した侍と、外《ほか》に二人都合三人連の侍が通用門を出まして小川町へかゝるから、顔を隠しては居るが、ひょっとしたら彼《あ》れが又市ではないかと、段々見え隠れに跡を追って参ります、なれども頓《とん》と様子が分りません。すると伊賀裏《いがうら》まで来ると一人の侍は別れ、後《あと》は二人になりまして、
侍「あゝ大きに熱うございました」
 と云う。これは成程熱い訳で、気候がぽか/\暖《あった》かいに、頭巾を冠《かむ》っていては堪《たま》らん訳でございます。やがて頭巾を取ると総髪《そうはつ》の撫付《なでつけ》で、額には斯う疵がある、色黒く丈《せい》高く、頬《これ》から頤《これ》へ一抔《いっぱい》に髯《ひげ》が生えている逞《たくま》しい顔色《がんしょく》は、紛れもない水司又市でございますから、親の敵と直《すぐ》に討掛《うちか》かろうと思ったが、まだ連《つれ》の侍が一人居りまするから、段々見え隠《がく》れに付いて参ると、浜町《はまちょう》へ出まして、彼《あ》れから大橋を渡りますると、また一人の侍は挨拶をいたして別れ、御船蔵前《おふなぐらま
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