誠に気の毒千万、えん、うん水司又市あーア何うも彼奴《あいつ》は兇悪な奴だ、今に悪事を重ねる事で有るか、何う致してもなア、医者を呼んで手当をして遣ろうが、中々の深傷《ふかで》で有るて、なれども確《しっ》かり致せよ、命数尽きざる中《うち》は何《ど》の様《よう》な深傷でも、数十ヶ所縫う様な傷でも決して死ぬものじゃアない、又万一療養相叶わずして相果《あいはて》る事があれば、後《あと》に残るは貴様の女房……二人が剣術も知らずに無暗《むやみ》に敵を討とうと思っても、水司又市は中々の遣《つか》い手だから容易に討てやせぬ、手前も仔細有って其の水司又市に逢わんければ成らぬ事が有るから、貴様が万一の事が有れば娘は自分の娘にして剣術も教え、貴様は己が過《あや》まって殺したのじゃに依って、後々《のち/\》愈々《いよ/\》又市を討つ時には己が力に成って助太刀をして討たせるが、何か貴様申置く事があらば遠慮なく云えよ」
山「はい有難う、有難う、私は不調法から貴方に斬られて死ぬのは決してお怨みとは存じませんが、只水司又市に一刀《ひとたち》も怨まぬのが残念でございます、私の親と申しまする者は、元は榊原藩で貴方も御同藩な
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