《たれ》も這入っては来《こ》まいが、若《も》し来ては成らぬから締りをして参れ、これ誠に気の毒な事だけれども、私《わし》も刃物で切込まれるから、已《や》むを得ず気の毒ながらも深傷《ふかで》を負わしたが、一体何う云う仔細でまア水司又市を敵と探す者か、此方《こちら》は手負《ておい》で居るからせつない、これ娘お前泣かずに訳を云え」
繼「はい/\、私は越中の高岡大工町の藤屋七兵衞の娘繼と申しまする者でございますが、七年|前《あと》に私の継母《まゝはゝ》と、つい前の宗慈寺と申す真言寺の永禪と申しまする和尚と不義をして、然《そ》うして親共を薪割で殺して二人で逃げました、私は丁度十二の時で、何うぞ敵を討ちたいと心に掛けまして、三年|前《あと》に高岡を出まして、巡礼を致して敵の行方を捜しました所が、更に心当りもなく、つい先達《せんだっ》て江戸へ出て参りました、参って伯父の処に厄介になって居りまする中《うち》に、この深川富川町に水司又市という人が有って、元は榊原様の家来で家敷《やしき》を出て、一|度《たび》頭髪《あたま》を剃り、又|還俗《げんぞく》して按摩をして居る水司又市と聞きました故、親の敵という一心
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