います」
太「そりゃア人違いと分れば手当もして遣ろうが、油断は出来ませぬ、ひょッとして又、何うもなア……全く人違いであろう」
山「はい」
太「左様か」
山「お年と云い、額の疵と云い、榊原の家来で水司又市様と仰しゃいましたから、同じお名前故に取違えましたのでございます」
太「やア是ははや是ははや、私《わし》は水司又市じゃアない、私は水島太一郎《みずしまたいちろう》という者だが、按摩に成ってからは太一と申すが、其方《そち》は水司又市を敵と狙《ねら》うのか」
山「はい」
太「やアそれは気の毒千万な事を致した、うん、うん、姉の敵で、彼《あ》の者には親の敵だと、未だ年も行《ゆ》かんで親の敵姉の敵を討とうと云う其の志ある壮者《わかもの》を、怪我させまいと背打《むねうち》にする心得だったが、困った事を致したな、是《こり》ゃア不便《ふびん》な事を致した、手が機《はず》んだから、余程|深傷《ふかで》のようだ、まア/\/\待て」
 と彼《か》の按摩取太一が山之助の傷を見ると、果して余程深く切込みました。
太「こりゃア機みも機んだので、迚《とて》も助かりそうは無い……まアこれ表の鎖鑰《かけがね》を掛けろ、誰
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