って旦那が聞いたら、元は侍だが仔細有って坊様に成りまして、それから私が眼《まなこ》潰れましたが、だん/\又宜く成りまして、只今では按摩取を致しますと云うから、何うも然《そ》うだんべえ、何でも只の人でなえと思ったッて、私《わし》もまア一寸《ちょっと》年始に行った時見たが立派な武士《さむらい》で、成程只の按摩取でなえ、黒の羽織を着て、短い木刀を差して、然《そ》うして按摩をしたり、針をしたり何かするって、針も中々えらいもんだって、大変に流行《はや》るだ、何でもその按摩の名は一徳《いっとく》とか何とか云ったっけ」
婆「はえーい元は侍だって、何様《どん》な人だえ」
百「うん、何とか云ったッけ忘れた、ん、ん何よ元は榊原様の家来で、一旦坊様に成ってまた還俗《げんぞく》したと云うが、何でもはア年は四十二三で立派な男だ」
婆「はえーい然《そ》うかなえ」
と話をして居ると、部屋に居ったお繼が突然《いきなり》飛出して来まして、
繼「おじさんお出《い》でなさい只今承わりました、元は侍で、一旦出家に成りまして、また還俗致して按摩取に成ったと云うのは、名前は何と申しますか、その人の額に疵《きず》が有りますか」
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