さい」
婆「誰だい」
百「おゝ婆《ばあ》さまか、家のは何処へ」
婆「今日は細田まで行くってえなえ、嫁も今湯う貰いに行ったから留守うして居ますわ、まアお掛けなさい、一服お吸いなさい」
百「はア細田へ行ったゞかえ、それじゃアちょっくら帰らないなア、婆さま、まア何時も達者で宜《え》いのう」
婆「達者だってこれ何時までも生きてると厄介《やっけえ》だと思うけれども、何うも寿命だから仕様が無《ね》えだ、早く死にたいと云ったら死にたいと云うのは愚痴だって光恩寺《こうおんじ》の和尚様に小言を云われただ」
百「長生《ながいき》すれア宜《よ》かんばいじゃアないか」
婆「お前も何時も達者だねえ」
百「私《わし》アはア婆様より二十も下だが己《おれ》の割にすると婆さまは達者だ」
婆「達者では私《わし》無《ね》いだ、腰もつん曲るし役にも立たないで、夜になると眠くてのう」
百「あんたア立派な好《い》い嫁を貰って、まだ孫が出来ないだねえ」
婆「まだ出来ないよ、あんたア子供は幾人《いくたり》有るだかなア」
百「私《わし》ア二人でなア、惣領の姉に養子をしたゞが、養子は堅い人間だからまア宜《よ》いでがすが、弟の野郎が十三に
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