悟はしたが怖いなア、こりゃアいけない、柄杓を落してしまった…だが彼奴《あいつ》はまア何だろう、私を女と思って居やアがって、無闇と人の頬片《ほッぺた》へ髭面《ひげつら》を摩《こす》り附けやアがって……おや笠を落してしまった、仕様が無いなア……おや笠は此処に落《おッこ》ちてる、先刻《さっき》落《おッこ》ちる機《はず》みに柄杓を……おや柄杓も此処におや/\巡礼も此処に落《おッこ》ちてる……」
と谷地《やち》を渡って向うへ行《ゆ》きますると、草の上へ仰向反《のけぞり》になって居る巡礼が有るから、
山「おう/\/\/\可愛そうに、此の人は洗馬で向側《むこうがわ》を流して居て、宮之越で合宿《あいやど》になった巡礼だ、其の時は怖いと思ったから言葉も掛けなかったが、何うも飛んだ災難じゃアないか、此の人は何うしたんだろう、目をまわして居る、おい巡礼さん何処の巡礼さんか確《しっ》かりしなさいよ、此処は谷の中でございますよ、可愛そうに何うしたんだろう、此の笠も柄杓も此の人のだ、己のじゃアない、だがまア何うしたんだろう、おゝ薬が有ったッけ」
と貯えの薬を出して、飲ませようと思いましたが、確かり歯を喰《くい
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