く苦しませるぞ、さア此処はもう誰も通りゃアしねえ、その横へ這入ると観音堂が有って堂の縁が広いから」
山「冗談しちゃアいけません、私は其様《そん》な者じゃアございません」
勇「そんな事を云っちゃアいけないよ、お前が宿に泊って湯に這入る時に大騒ぎをするから、肌襦袢に縫付けて金を持ってる事もちゃんと承知だ」
山「何をなさる」
勇「何をと云って何うせ此方《こっち》は盗みが商売だから」
山「無闇な事をなさるな」
勇「無闇が何うする、斯うだぞ」
山「何うもいけません、何をなさるのだ」
 と山之助が勇治の頬片《ほゝぺた》をぽんと打ちました。処が山之助は白島村に居る時分に、牛を牽《ひ》いたり麁朶《そだ》を担《かつ》いだりして中々力のある者、その力のある手で横っ面を打たれたから、こりゃア女でも中々力がある、滅法に力のある女だと思って、
勇「何をする、汝がきゃアぱア云やア拠《よんどこ》ろなく叩き斬るぞ」
 本当に斬る気では有りませんが、嚇《おど》して抱いて寝る積りで、胡麻の灰の勇治がすらり抜くと山之助も脊負《しょ》っている苞《つと》から脇差を出そうかと思ったが、いや/\怪我でもしてはならぬ大事の身体と考え
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