、私を見捨てる…あ痛い何をするのだね、何《ど》うも怖ろしい人じゃアないか、腹立紛れに打ったのは悪いと謝まるじゃアないか、こんな峠へ来て何だねえ、私を見捨てゝ行処《ゆきどころ》のない様にして何うする気だねえ」
又「何うも斯《こ》うもない、一大事の事を嫉妬紛《やきもちまぎ》れにぎゃア/\云って、二人の首の落るを知らぬか、余《あんま》り馬鹿で愛想が尽きた」
梅「愛想が尽きたってお前さん」
又「さっ/\と行《ゆ》け」
梅「あれ危い、胸を突いて谷へでも落ちたら何うするのだね、本当に怖い人だ、それじゃア何だね私にお前愛想がつきて邪魔になるから、お前の身の上を知って居るから谷へ突落して殺す了簡かえ」
又「えゝ知れた事だ」
と云いながら道中差の小長いのを引抜きましたから、お梅は驚きまして、ばた/\/\/\逃げかゝりましたなれども、足場の悪い城坂峠、殊には夜道でございますから、あれ人殺しと声を立てに掛ったが、相手は亭主、そこは情と云うものが有るから、人殺しと云ったら人でも出て来て、二人の難儀に成りはしないかと思い、
梅「あれ気を静めないか、全く別れるなら話合いに」
と言掛けまするが、最《も》う取上《
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