》も居《お》らぬは幸いじゃア、只《たっ》た一度で諦めるから」
やま「あら呆れたお方様で、それでは折角の貴方御親切も水の泡になります、伯父も彼様《あん》なお方はない、額に疵《きず》を受けるまで命懸で助けて下すったから、その御恩を忘れては済まないよと伯父も申しますから、私《わたくし》も有難いお方と存じて居りまして、実に届かぬながらお世話致します心得でございますに、そんな事を仰しゃって下さると実に腹が立ちます」
又「腹が立ちますと云ったって、恩義に掛けるわけではないが、けれども、宜《よ》いじゃアないか、私《わし》も命懸で彼処《あすこ》へ這入って助け、私が通り掛らぬ時は、悪者に押え付けられて、否《いや》でも応でも三人のため瑕瑾《きず》が付くじゃアないか、それを助けて上げたから、彼処で□□□□れたと思うて素性の知れた私に一度ぐらい云う事を聴いても宜いじゃアないか」
やま「貴方にはお内儀《かみさん》がお有んなさるではございませんか」
又「女房は有りやせん」
やま「あら惠梅様は貴方のお内儀でございます、お比丘尼様に済みませんから貴方の側へは参りません」
又「比丘だって彼《あ》れは女房ではない、彼れは
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