武士「はア左様かのう」
男「ちょっと/\旦那え」
と後《うしろ》に腰を掛けて居りました鯔背《いなせ》の男、木綿の小弁慶《こべんけい》の単衣《ひとえもの》に広袖《ひろそで》の半纏《はんてん》をはおって居る、年三十五六の色の浅黒い気の利いた男でございます。
武士「いやお前はナニとんと心付かぬで、何処にお居《い》でかな」
男「この衝立《ついたて》の後に有合物《ありあいもの》で一杯やって居ります、へー、碌な物は有りませんが、此の家《うち》の婆さんは綺麗|好《ずき》で芋を煮ても牛蒡《ごぼう》を煮ても中々加減が上手でげす、それに綺麗好だから喰い心がようございます」
武士「はゝあ貴公何だね、言葉の様子では江戸|御出生《ごしゅっしょう》の様子だね」
男「へい旦那も江戸児《えどっこ》のようなお言葉遣いでげすね」
武士「久しく山国《やまぐに》へ来て居て田舎者に成りました」
男「今の娘を美《い》い女だと賞《ほ》めておいでなすったが、あれは白島村の何《なん》です元は武士《さむらい》だと云いますが、何《ど》ういう訳か伯父が有ると云うので、姉弟《きょうだい》で伯父の世話になって居ますが、弟は十六七でございますが
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