を入れて、又市が寺男になって居てお経を教えて居る。其の中《うち》に尼はだん/\覚えてお経を読むようになると、村方から麦或いは稗《ひえ》などを持って来て呉れるから、貰う物を喰って漸《ようや》く此処に身を潜めて居る中に又市も頭髪《かみ》は生えて寺男の姿になり、片方《かた/\》は坊主馴れて出家らしく口もきく此処に足掛三年の間居りますから、誰有って知る者はございません。爰《こゝ》にお話は二つに分れまして寛政九年八月十日の事でございますが、信州|水内郡《みのちごおり》白島村《しろしまむら》と申す処がございます。是は飯山《いいやま》の在で山家《やまが》でございます。大滝村《おおたきむら》という処に不動様がありまして、その側《わき》に掛茶屋があって、これに腰を掛けて居ります武士《さむらい》は、少し羊羹色《ようかんいろ》ではありますが黒の羽織を着て、大小を差して紺足袋に中抜《なかぬき》の草履を穿《は》き、煙草を呑んで居りますると、此の前を通りまする娘は年頃二十一二でございますが、色のくっきり白い、山家に似合わぬ人柄の能《よ》い女で、誠におとなしやかの姿で、前を通って頻《しきり》[#「頻《しきり》」は底
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