》み、仕方が無いから分散して、夫婦の中に十歳になりますお繼という娘を連れて、行《ゆ》く処《ところ》もなく、越中《えっちゅう》の国|射水郡高岡《いみずごおりたかおか》と云う処に、萬助《まんすけ》という以前の奉公人が達者で居ると云うから、これを頼って行《ゆ》き、大工町《だいくちょう》という片側町《かたかわまち》で、片側はお寺ばかりある処へ荒物店《あらものみせ》を出し、詰らぬ物を売って商い致す中《うち》に、お梅もだん/\慣れまして、外《ほか》に致方《いたしかた》も無いから人仕事《ひとしごと》を致しますし、碌には出来ませんが、前町《まえまち》は寺が多いからお寺の仕事をします。和尚さんの着物を縫ったり、納所部屋《なっしょべや》の洗濯をしたり、よう/\と細い煙りを立てまして居ります中《うち》、お話は早いもので、もう此の高岡へ来ましてから三年になりますが、大工町に宗慈寺《そうじじ》という真言宗の和尚さんは、永禪《えいぜん》と申して年三十七でございます。此の人は誠に調子の宜《い》い和尚さんで、檀家の者の扱いが宜しいから信じまして、畳を替える本堂の障子を張替《はりかえ》る、諸処を修繕するなど皆檀家の者が各番《かくばん》に致す、田舎寺で大黒の一人ぐらいは置くが、この和尚は謹慎《つゝしみ》のよい人故仕事はお梅を頼み、七兵衞が来ると調子宜くして、
永「お前は以前《もと》大家《たいけ》と云うが、災《わざわい》に遭《あ》って微禄して困るだろう、資本《もとで》は沢山は出来ぬが十両か廿両も貸そう」
と云って金を貸す。苦し紛れに借ると返せないから言訳に行くと、
永「もう十両も持って行《い》け」
と三四十両も借財が出来ましたから、お梅は大事にしてはお寺へ手伝《てづた》いに行《ゆ》き宜く勤めます。ちょうど九月節句前、鼠木綿の着物を縫上げて持って行《ゆ》くと、人が居ないから台所から上《あが》り、
梅「あの眞達《しんたつ》さん、庄吉《しょうきち》さん……居ないの、何方《どなた》も入《いら》っしゃいませんか」
永「誰《たれ》じゃ」
梅「はい」
永「おゝお梅さんか、此方《こっち》へ来なさい」
梅「はい、まことに御無沙汰致しました」
永「いゝや最《も》う何《ど》うも、もう出来《でけ》たかえ、早いのう、今ねえ皆|使《つかい》に遣《や》ったゞ、眞達も庄吉も居ないで退屈じゃア有るし、それに雨が降って来た故」
梅「い
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