なお薬《くすり》を頂《いたゞ》くのみならず、お料理《れうり》の残余物《あまりもの》まで下《くだ》され、有難《ありがた》う存《ぞん》じます、左様《さやう》ならこれへ頂戴《ちやうだい》致《いた》しますと、襤褸手拭《ぼろてぬぐひ》へ包《くる》んであつた麪桶《めんつう》を取出《とりだ》して、河合金兵衛《かはひきんべゑ》の前《まへ》へ突出《つきだ》すのを、金兵衛《きんべゑ》手に取つて見ますると、遠州《ゑんしう》所持《しよぢ》の南蛮砂張《なんばんすばり》の建水《みづこぼし》でございます。主「まアお前《まへ》、結構《けつこう》な建水《こぼし》だが此建水《このこぼし》をお前《まへ》は、何《なに》か麪桶《めんつう》の代《かは》りに使《つか》ふのか。乞「はい最《も》う何《な》にも彼《か》も売《う》り尽《つく》しましたが、此品《これ》は私《わたくし》の秘蔵《ひざう》でございますから、此品《これ》だけは何《ど》うも売却《はな》すことが忌嫌《いや》でございますから、只今《たゞいま》もつて麪桶《めんつう》代《がは》りに傍離《そばはな》さずに使つて居《を》ります。主「ンー、これは恐入《おそれい》つたね、お前《まへ》
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