なた》でございましたか」
清「えゝ、お内室《かみ》さんあんたはまアどうして此様《こんな》にお成りなさいました、十四年|前《あと》お宅で御厄介になりやした家根屋の清次でございやす」
母「おゝ、清次か、おゝ/\まアどうもまア、思いがけない懐かしい事だなア、此様《こんな》に零落《おちぶれ》やしたよ、恥かしくって合《あわ》す顔はございやせんよ」
清「えゝ御尤《ごもっとも》でございやす、あれだけの御身代が東京へ来て、裏家住《うらやずま》いをなさろうとは夢にも私《わっち》は存じやせんでした、お嬢様も少《ちい》さかったから私も気が付かなかったが、観音様のお厨子に旦那のお名前があって分りましたが、承われば旦那には七年|前《あと》お国を出たぎり帰らないとの事、とんだ訳でございやす、忘れもしやせん、私が道楽をして江戸を喰詰《くいつ》め前橋へまいって居《お》って、棟梁の処から弁当を提《さ》げて、あなたの処へ仕事に往った時、私《わっち》アあのくらいな土庇《どびし》はねえと、いまだに眼に附いています、椹《さわら》の十二枚|八分足《はちぶあし》で、大《たい》したものだ、いまだに貴方《あなた》のお暮しの話をして居り
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