ゃくにけん》の棟割長屋《むねわりながや》ゆえ、戸棚もなく、傍《かたえ》の方へ襤褸夜具《ぼろやぐ》を積み上げ、此方《こちら》に建ってあります二枚折《にまいおり》の屏風《びょうぶ》は、破れて取れた蝶番《ちょうつがい》の所を紙捻《かんぜより》で結びてありますから、前《まい》へも後《うしろ》へも廻る重宝《ちょうほう》な屏風で、反古張《ほごばり》の行灯《あんどん》の傍《そば》に火鉢《ひばち》を置き、土の五徳《ごとく》に蓋《ふた》の後家《ごけ》になって撮《つまみ》の取れている土瓶《どびん》をかけ、番茶だか湯だかぐら/\煮立って居りまして、重二郎というおとなしい弟《おとゝ》が母の看病をして居ります。
清「えゝ、お母《ふくろ》さん/\」
母「はい、何方《どなた》でがんすか」
ま「あの此の方はお虎さんの家《うち》に来ていらっしゃった家根屋の棟梁さんで、お母《っか》さんを知っていらっしゃいまして、何うしてこんな姿におなりだお気の毒な事だと云って、見舞に来て下すった、前橋にいた時分のお馴染《なじみ》だという事でございます」
母「はい、私《わし》は眼がわるくなりやんして、お顔を見ることも出来ませんが、何方《ど
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