す」
虎「黙って沢山《たんと》貰った積りでおいでよ、人が来るといけないから早く二階へお上《あが》りよ」
ま「何卒《どうぞ》観音様のお厨子を…はい有り難うございます、拝借のお金はこれへ置きます、伯母さん何処《どこ》へいらっしゃいます」
虎「早くお上り」
 と無理に娘おまきを二階へ押上げお虎は戸を締めて其の儘《まゝ》表へ出て参りました。おまきは間《ま》がわるいから清次の方へお尻をむけて、もじ/\しています。清次も間が悪いが声をかけ、
清「姉《ねえ》さん、此方《こっち》へお出《い》でなさい、何《なん》だか極《きま》りが悪いなア、姉さんそう間を悪がって逃げてゝはいけねえ、実はねえ、私《わっち》アお前さんを慰《なぐさ》みものに仕ようと云ったのではない、お母《っか》さんが得心すれば嫁に貰っても宜《い》いんだが、女房《にょうぼ》になってくれる気はねえかえ」
 と云われて、おまきは両手を附き、首を垂《た》れ、
ま「私《わたくし》も親父《おやじ》が家出を致して、いまだに帰りませんから、親父が帰った上、母とも相談致さなければ亭主は持たない身の上でございますから、そんな事はいけません、傍《そば》へお出《い》
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