たが、此の車夫は泳ぎを心得て居ると見え、抜手《ぬきで》を切って岸辺へ泳ぎ附くを、又作が一生懸命に車の簀蓋《すぶた》を取って、車夫の頭を狙《ねら》い打たんと身構えをしました。是からどういう事に相成りますか、一寸《ちょっと》一息《ひといき》致しまして申上げましょう。

     三

 さて春見丈助は清水助右衞門を打殺《うちころ》しまして、三千円の金を奪い取りましたゆえ、身代限りに成ろうとする所を持直《もちなお》しまして、する事為す事皆当って、忽《たちま》ち人に知られまする程の富豪《ものもち》になりました。又|一方《かた/\》は前橋の竪町で、清水助右衞門と云って名高い富豪《ものもち》でありましたが、三千円の金を持って出た切《ぎ》り更に帰って来ませんので、借財方から厳しく促《はた》られ遂《つい》に身代限りに成りまして、微禄《びろく》いたし、以前に異《かわ》る裏家住《うらやずま》いを致すように成りました。実に人間の盛衰は計られぬものでございます。春見が助右衞門を殺します折《おり》に、三千円の預り証書を春見の目の前へ突付け掛合う中《うち》に、殺すことになりまして、人を殺す程の騒ぎの中《なか》です
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