シャツを着て居りますが、羽織も黒といえば体《てい》が好《い》いけれども、紋の所が黒くなって、黒い所は赤くなって居りますから、黒紋の赤羽織といういやな羽織をまして[#「まして」は「きまして」の誤記か]兵児帯《へこおび》は縮緬《ちりめん》かと思うと縮緬呉絽《ちりめんごろう》で、元は白かったが段々鼠色になったのをしめ着て、少し前歯の減った下駄に、おまけに前鼻緒《まえばなお》が緩《ゆる》んで居りますから、親指で蝮《まむし》を拵《こしら》えて穿《は》き土間から奥の方へ這入って来ました。
又「誠に暫《しばら》く」
丈「いや、これは珍らしい」
又「誠に存外の御無音《ごぶいん》」
丈「これはどうも」
又「一寸《ちょっと》伺《うかゞ》わなけりゃならんのだが、少し仔細《しさい》有って信州へ行って居りましたが、長野県では大《おお》きに何も彼《か》もぐれはまに相成って、致し方なく、東京までは帰って来たが、致方《いたしかた》がないから下谷金杉《したやかなすぎ》の島田久左衞門《しまだきゅうざえもん》という者の宅に居候《いそうろう》の身の上、尊君《そんくん》にお目に懸《かゝ》りたいと思って居て、今日《きょう》図《は
前へ
次へ
全151ページ中5ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング