しないか」
車「大丈夫《でいじょうぶ》だよ、時々|私《わし》らが寒くって火を焚く事があるが、巡査《おまわり》がこれなんだ、其処《そこ》で火を焚いて、消さないか、と云うから、へい余《あんま》り寒うございますから火を焚いて※[#「※」は「火へん+共」、第3水準1−87−42、509−1]《あた》って居りますが、只今踏消して参りますと云うと、そんなら後《あと》で消せよと云って行《ゆ》くから、大丈夫《だいじょうぶ》だ、さア此処《こゝ》へ下《おろ》すべい」
 と之《こ》れから車を沼の辺《へり》まで引き込み、彼《か》の荷を下《おろ》し、二人で差担《さしかつ》ぎにして、沼辺《ぬまべり》の泥濘道《ぬかるみみち》を踏み分け、葭《よし》蘆《あし》茂る蔭《かげ》に掻《か》き据《す》えまして、車夫は心得て居りますから、枯枝《かれえだ》などを掻き集め、燧《まっち》で火を移しますると、ぽっ/\と燃え上る。死人《しびと》の膏《あぶら》は酷《ひど》いから容易には焼けないものであります。日の暮れ方の薄暗がりに小広い処で、ポッポと焚く火は沼の辺《へり》故《ゆえ》、空へ映《うつ》りまして炎々《えん/\》としますから、又作は
前へ 次へ
全151ページ中39ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング