作は大《おお》きに驚き慌てゝ、
又「おい車夫《くるまや》、待て、これ暫《しばら》く待てと云うに、仕様のない奴だ、太《ふて》え奴だなア」
車「何方《どっち》が太《ふて》えか知れやしねえ」
又「そう何もかも手前《てめえ》に嚊《か》ぎ附けられては止《や》むを得ん、実は死人《しびと》だて、就《つい》ては手前《てま》[#「てまえ」あるいは「てめえ」か]に金子二拾両|遣《や》るが、何卒《どうぞ》此の事を口外してくれるな、打明けて話をするが、此の死骸は実は僕が権妻《ごんさい》同様のものだ」
車「それなら貴方《あんた》の妾か」
又「なに僕の妾というではない、去る恩人の持ちものだが、不図《ふと》した事から馴れ染め、人目を忍んで逢引《あいびき》をして居ると、その婦人が懐妊したので堕胎薬《おろしぐすり》を呑ました所、其の薬に中《あた》って婦人は達《たっ》ての苦《くるし》み、虫が被《かぶ》って堪《たま》らんと云って、僕の所へ逃出《にげだ》して来て、子供は産《うま》れたが、婦人は死んでしまった所密通をした廉《かど》と子を堕胎《おろ》した廉が有るから、拠《よんどころ》なく其の死骸を旅荷に拵《こしら》え、女の在所へ
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