けとしあき》という者にいたしてお話を此方《こちら》のことに直しましただけの事で、原書をお読み遊ばした方は御存じのことでございましょうが、これは或る洋学先生が私《わたくし》に口移しに教えて下すったお話を日本《にほん》の名前にしてお和《やわら》かなお話にいたしました。そのおつもりでお聴きの程を願います。徳川家が瓦解《がかい》になって、明治|四五年《しごねん》の頃|大分《だいぶ》宿屋が出来ましたが、外神田松永町《そとかんだまつながちょう》佐久間町《さくまちょう》あの辺には其の頃大きな宿屋の出来ましたことでございますが、其の中に春見屋《はるみや》という宿屋を出しましたのが春見丈助という者で、表構《おもてがまえ》は宏高《こうこう》といたして、奥蔵《おくぐら》があって、奉公人も大勢使い、実に大《たい》した暮しをして居ります。娘が一人有って、名をおいさと申します。これはあちらではエリザと申しまするのでお聞分《きゝわけ》を願います。十二歳になって至って親孝行な者で、その娘を相手にして春見丈助は色々の事に手出しを致したが、皆|失敗《しくじ》って損ばかりいたし、漸《ようよ》うに金策を致して山師《やまし》で
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