西洋床ですから旧弊頭《きゅうへいあたま》は遣《や》りません…おや、あなたは前橋の旦那ですねえ」
助「誰だ、何うして私《わし》を知っているだ」
床「私《わっし》やア廻りに歩いた文吉《ぶんきち》でございます」
助「おゝそうか、文吉か、見違《みちがえ》るように成った、もうどうも成らなかったが辛抱するか」
文「大辛抱《おおしんぼう》でございます旦那どうもねえ、前橋にいる時には道楽をして、若い衆の中へ入って悪いことをしたり何かして御苦労を掛けましたから、書ければ一寸《ちょっと》郵便の一本も出すんでげすが、何うも人を頼みに往《ゆ》くのもきまりが悪くて、存じながら御無沙汰をしました、宜《よ》く出てお出《い》でなすった、東京見物ですかえ」
助「なアに、当時は己《おれ》も損をして商売替《しょうべいげえ》をしべいと思って、唐物《とうぶつ》を買出しに来たゞが、馴染《なじみ》が少ないから横浜へ往って些《ちっ》とべい[#「些《ちっ》とべい」は底本では「些《ちっ》っとべい」]買出しをしべいと思って東京でも仕入れようと思って出て来た」
文「へい、商売替《しょうばいがい》ですか、洋物《ようぶつ》は宜《よ》うがすねえ、
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