い、番頭の仮色《こわいろ》を遣《つか》って金を預けさせるようにした手際《てぎわ》は」
 まア愉快というので、お酒を喫《た》べて居りますとは清水助右衞門は少しも存じませんから、四角《よつかど》へまいりまして見ると、西洋床というのは玻璃張《がらすばり》の障子《しょうじ》が有って、前に有平《あるへい》のような棒が立って居りまして、前には知らない人がお宮と間違えてお賽銭《さいせん》を上げて拝みましたそうでございます。助右衞門は成程有平の看板がある、是だなと思い、
助「御免なさいまし、/\、/\、此処《こちら》が髪結床《かみゆいどこ》かね」
 中床《なかどこ》さんが髭《ひげ》を抜いて居りましたが、
床「何《なん》ですえ、広小路《ひろこうじ》の方へ往《ゆ》くのなら右へお出《い》でなさい」
助「髪結床は此方《こちら》でがんすか」
床「両国の電信局かね」
助「こゝは、髪結う所か」
 と云っても玻璃障子《がらすしょうじ》で聞えません。
床「何ですえ」
助「髪を結って貰いたえもんだ」
床「へいお入《はい》んなさい、表の障子を明けて」
助「はい御免、大《でけ》い鏡だなア、髪結うかねえ」
床「此方《こちら》は
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