、可愛《かわ》いゝ同志が夫婦になり、失いました宝が出るという勧善懲悪《かんぜんちょうあく》の脚色《しくみ》は芝居でも草双紙《くさぞうし》でも同じ事で、別して芝居などは早分《はやわか》りがいたしますが、朝幕《あさまく》で紛失した宝物《たからもの》を、一日掛って詮議《せんぎ》を致し、夕方には屹度《きっと》出て、めでたし/\と云って打出しになりますから、皆様も御安心でお帰りになりますが、何も御見物と狂言中の人と親類でも何《なん》でもないに、そこが勧善懲悪と云って妙なもので、善人が苦しむ計《ばか》りで悪人が終《しま》いまで無事でいましては御安心が出来ません。然《しか》し善という事はむずかしいもので、悪事には兎角《とかく》染《そま》り易《やす》いものでござります。彼《か》の春見丈助利秋は元八百石も領《りょう》しておりました立派な侍でありながら、利慾《りよく》のため人を殺して奪いました其の金で、悪運強く霊岸島川口町で大《たい》した身代になりましたが、悪事というものは、何《ど》のように隠しても隠し遂《おお》せられないもので、どうして彼《あ》の人があのように金が出来たろう、何《なん》だか訝《おか》しい
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