たから、駈けて帰り、宅《うち》の方は宜《よ》いようにして、お嬢様と一緒に先刻から此処《こゝ》にまいって待って居りましたが、本当に宜くいらっしゃいました、嬢さまが頻《しき》りに心配なすっていらっしゃいますよ」
い「兼や、あの御膳《ごぜん》を」
と云えば、おかねはまめまめしく。
兼「あなたお急ぎでございましょうが、嬢さまが一《ひ》と口《くち》上げて、御膳を上げたいと仰《おっ》しゃいますから」
重「私《わしゃ》アお飯《まんま》はいけません、お母《ふくろ》が待って居ますから直《す》ぐに帰《けえ》ります」
兼「なんでございますねえ、本当にお堅いねえ、嬢様が余程《よっぽど》なんしていらっしゃいますのに、貴方お何歳《いくつ》でいらっしゃいますえ」
重「私《わしゃ》ア二十三でございます」
か「本当に御孝行ですねえ、嬢様は貴方の事ばかり云っていらっしゃいますよ、そうして嬢様はひとさわがしいがや/\した事はお嫌いで、余所《よそ》の姉《ねえ》さん達のように俳優《やくしゃ》を大騒ぎやったりする事はお嫌いで、貴方の事ばかり云っていらっしゃいますから、本当に貴方、嬢様を可愛《かわい》そうだと思って、お参りにお出
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