西洋の丁稚
三遊亭円朝
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)若春《わかはる》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一|席《せき》
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)なに/\
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
−−
エー若春《わかはる》の事で、却《かへ》つて可笑《をかし》みの落話《おとしばなし》の方《はう》が宜《い》いと心得《こゝろえ》まして一|席《せき》伺《うかゞ》ひますが、私《わたくし》は誠に開化《かいくわ》の事に疎《うと》く、旧弊《きゆうへい》の事ばかり演《や》つて居《を》りますと、或《あ》る学校《がつかう》の教員《けうゐん》さんがお出《い》でで、お前《まへ》はどうも不開化《ふかいくわ》の事ばかり云《い》つて居《ゐ》るが、どうか然《さ》うなく開化《かいくわ》の話をしたら宜《よ》からう、西洋の話をした事があるかと仰《おつ》しやいました、左様《さやう》でございます、マア続《つゞ》いた事は西洋のお話もいたしましたが、まだ落話《おとしばなし》はいたしませんと申《まう》したら、落話《おとしばなし》で極《ごく》面白《おもしろ》い事があるから一|席《せき》教《をし》へて上《あ》げようといふので、教《をそ》はり立《たて》のお話しでございます、拙《まづ》い処《ところ》は幾重《いくへ》にもお詫《わび》をいたして弁《べん》じまする。
西洋《あちら》の子供は至《いたつ》て利口《りこう》だといふお話で。或《あ》る著述《ちよじゆつ》をなさるお方《かた》がございます。是《これ》はやはり日本《こちら》でも同じ事で、著作《ちよさく》でもなさる方《かた》は誠に世事《せじ》に疎《うと》いもので、何所《どこ》か気《き》の附《つ》かん所があります、学問《がくもん》にもぬけてゐても何《なに》かに疎《うと》いところがあるもので、伊太利《いたりー》の著作家《ちよさくか》で至《いた》つて流行《りうかう》の人があつて、其処《そこ》へ書林《ほんや》から、本を誂《あつ》らへまするに、今度《こんど》は何々《なに/\》の作《さく》をねがひますと頼《たの》みに行《ゆ》きまする時に、小僧《こぞう》が遣物《つかひもの》を持つて行《ゆ》くんです。処《ところ》が西洋《あちら》では遣物《つかひもの》を持つて行《い》つた者に、使賃《つかひちん
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