衞門が助かると云うのは、全くお筆が孝行の然《しか》らしむる処で、親子諸共に罪を免されて出る。彼《か》の月岡幸十郎は訴え出まして、残らず事柄が分りますと云うのは、彼の伊勢銀に這入りまして家尻を切って二百両の金子《かね》を取ったのも此の者で、幸十郎は後に相当のお仕置に相成りました。下河原清左衞門親子は立帰り、主家は半地にお取立てに成りましたが、奥方の耳へも此の事が這入りまして、清左衞門親子はお召返しに相成りましたから、大恩が有るというので、かの腰の抜けた孫右衞門をも屋敷へ引取り、十分介抱して之を見送り、後孫右衞門は死去《みまか》りましたが、下河原の家はお筆が養子を取って家督を致しまするというお芽出度いお話でございます。
(拠酒井昇造速記)[#行末から3字上で地付き]



底本:「圓朝全集 巻の一」近代文芸資料複刻叢書、世界文庫
   1963(昭和38)年6月10日発行
底本の親本:「圓朝全集巻の一」春陽堂
   1925(大正15)年9月3日発行
※「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に基づいて、底本の表記をあらためました。
ただし、話芸の速記を元にした底本の特徴を残すために、繰り返し記号はそのまま用いました。
また、総ルビの底本から、振り仮名の一部を省きました。
底本中ではばらばらに用いられている、「其の」と「其」、「此の」と「此」、「彼《あ》の」と「彼《あの》」は、それぞれ「其の」「此の」「彼の」に統一しました。
また、底本中では改行されていませんが、会話文の前後で段落をあらため、会話文の終わりを示す句読点は、受けのかぎ括弧にかえました。
入力:小林 繁雄
校正:かとうかおり
2000年5月9日公開
2003年7月20日修正
青空文庫作成ファイル:
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