た処へ忍込んであの金子《かね》さえ取れば、又西河岸の桔梗屋《ききょうや》へ行って繁岡《しげおか》の顔でも見て楽しむ事が出来るという謀叛《むほん》が起り、其の夜《よ》深更に及んでお筆の家《うち》の水口を開け忍込んで見ると親子とも能く寝付いて居る様子、勘次は素《もと》より勝手を知って居りますから、例の千代紙で貼った針箱同様の糸屑の這入って居る箱の中から巾着を盗み出し、戸外《そと》へ出ると直《すぐ》に駕籠に乗って飛ばして廓内《なか》へ這入り西河岸の桔梗屋という遊女屋へあがりました。
勘「久しく様子が悪かったので来なかった」
馴染の娼妓か、
△「おや鼬《いたち》の道や」
勘「なにー篦棒めえ、鼬の道だって、あのなア繁岡さんと喜瀬川《きせがわ》さんを呼んで呉んな、揚女郎てえ訳ではねえが、私《わっち》は少し義理が有るから、旨《うめ》え物を沢山《たんと》食《あが》れ、なにー、愚図/\云うな、大台《おおでえ》を……大台をよ、内芸者《うちげいしゃ》を二人揚げて呉んな」
と金の遣い振りが暴《あら》い。
亭主「勘次さんは大層金の遣い振りが暴いじゃアねえかのう、喜助」
喜「へえ、何《なん》だか博奕《ばくち》に勝ったと被仰《おっしゃ》います」
と聞いて内証では何《ど》うも様子が訝《おか》しい、知ってる人だから朝勘定でも宜《い》いんだが、金の遣振りが訝しいから宵勘定に下げて貰え。と下《さが》った金を見ますると三星《みつぼし》の刻印が打って有る、是は予《かね》て巡達《じゅんたつ》に成って居《お》る処の不正金でございますから、
亭主「是は打棄《うっちゃっ》ちゃア置《おか》れない、直《す》ぐに……」
と云うので、是から其の頃の御用聞を呼びまして此の事を話すと石子伴作《いしこばんさく》様と云う定巡《じょうまわ》りの旦那が、
伴「夫《それ》は手附かずに出すが宜《い》い」
と云うので、二日|流連《いつゞけ》をさせて緩《ゆっ》くり遊興をさせ、充分金を遣わせて御用聞と話合いの上で、ズッと出る処を大門|外《そと》で、
○「御用」
勘「ハッ……」
と云って恟《びっく》りする、大抵な者は御用聞が御用と云う声を掛けるとペタペタとなるといいます。直《すぐ》に縛られて田町の番屋へ引かれる、仕様の無いものでございます。
○「勘次|汝《てめえ》の身分にしちゃア金遣いが滅法に暴《あら》えが、桔梗屋
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