出来なくても、あゝ能く出来た、お前のはお店《たな》の受けが好《よ》い是は光沢《つや》が別だと云うので手間を先へ貸して呉れるように致して万事に気をつけて呉れるから大仕合《おおじあわ》せで、其の内暮になると何か手伝いをして遣り度《た》いと思って居る処へ清左衞門が礼に参りました。
清「エヽ御免を蒙《こうむ》ります」
金「おやお出《いで》なさい斯《こ》うなって近々《ちか/″\》お出でになるに、然《そ》うお前さんの様に窮屈で悪固《わるがた》くっては困る」
清「何うも私は武骨者で困ります、段々とお世話様に相成り何共《なにとも》お礼の申し上げようが有りません、先達《せんだって》は又出来もせんものに、前以《まえもっ》てお給金を頂戴致し、中々今からお手間などを戴けるわけのものでは有りません」
蓮「なアにお前さん何日《いつ》でも旦那と噂をして居るの、大層お店《たな》の受けが宜《よ》い事、ちょいとお前さん早くお出しなさいよ」
金「あれはね其のどうせ来年の三月迄の手間賃で、私が上げる訳じゃアない、店《たな》から来たんだから遠慮をしてはいけない、是はね私の心許《こゝろばか》りのお歳暮でお筆さんに上げます、家内がお年玉をって、今から年玉を上げるのも可笑《おか》しいが、どうせ上げる物だからお歳暮と一緒に預かって置いて下さい」
清「是は何うも暮の二十八日にお年玉を、是は千万|辱《かたじけ》ない事で」
蓮「それから正月のうちはね、女子供は皆《みんな》美《よ》い身装《なり》をして来るから、貴方もお筆さんに着せ度《た》くお思いでしょう、また追々《おい/\》春の手間で差引きますが、年頃の娘の事ですから皆の身装を見たら羨《うらやま》しくも思いなさろう、仮令《よし》其様《そん》な気がないにもせよ、お筆さんばかり悪い身装をして来る訳にもいきますまい、是は台なしに成って今は不粋《ぶいき》ですが、荒っぽい小紋が有るんです、好《い》いンじゃアないんですが、お筆さんは人柄だけに小紋の紋付はお似合いだろうと思って、仕立屋へ遣ったんではないので、家《うち》で縫ったんですよ、夫《それ》に帯は紫繻子《むらさきじゅす》が宜かろうと、斯《こ》う云う訳で、赤い物が交《まじ》って気に入らないかも知らないが、朱《しゅ》の紋縮緬《もんちりめん》と腹合せにしてほんのチョク/\着るように、此の前掛は古いのですが、二度ばかりっきゃ
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