らず、お智恵《ちゑ》もなければ出《で》けんことぢやが、何《ど》うも結構《けつこう》な御商法《ごしやうはふ》ですな、若《も》しアヽー何《ど》うも此《この》お襖《ふすま》は何《なん》どす、銀錆《ぎんさび》で時代が十|分《ぶん》に見えますな、此方《こツちや》は古渡更紗《こわたりさらさ》の交貼《まぜはり》で、へえー何《ど》うも能《よ》く此位《このくらゐ》お集めになりましたな、へい、戴《いたゞ》きます、何《ど》うも此《この》お煎茶《せんちや》の器械からお茶碗《ちやわん》からお茶托《ちやたく》まで結構尽《けつこうづく》め、中々《なか/\》お店や何《なに》かで斯《か》ういふものを使ふお店は無い事で、何《ど》うもお菓子まで添《そ》へられて恐入《おそれいり》ます、へえ頂戴《ちやうだい》を……何《ど》うも流石《さすが》は御商売柄《ごしやうばいがら》だけあつて御主人《ごしゆじん》は愛嬌《あいけう》があつてにこやかなお容貌《かほつき》、番頭《ばんとう》さんから若衆《わかいしう》小僧《こぞう》さんまで皆《みな》お子柄《こがら》が宜《え》いなモシ、実《じつ》に惜《を》しいやうですな、エヘヽヽ表《おもて》を通《とほ》る女子達《をなごたち》は皆《みな》立留《たちどま》る位《くらゐ》のもんで、斯《か》ういふ珠揃《たまぞろひ》のお方々《かた/″\》が居《ゐ》て世辞《せじ》を商《あきな》ひして居《ゐ》らつしやる処《ところ》へ買《かひ》に来《き》ましたのは手前共《てまいども》の仕合《しあはせ》で、世辞《せじ》の好《よ》いのがありましたら二三個《ふたつみつ》頂戴《ちやうだい》しませうか。主人「これ/\早く箱を片附《かたづけ》なよ。客「ナニ片附《かたづけ》ぬでも宜《よろ》しい、手前《てまい》は世辞《せじ》を買《かひ》に来《き》たのです。主人「イヽエ何《ど》ういたして手前共《てまいども》では仲間売《なかまうり》は致《いた》しませぬ。
底本:「明治の文学 第3巻 三遊亭円朝」筑摩書房
2001(平成13)年8月25日初版第1刷発行
底本の親本:「定本 円朝全集 巻の13」世界文庫
1964(昭和39)年6月発行
入力:門田裕志
校正:noriko saito
2009年8月18日作成
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